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Pitfall-43.

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43.







「なんで…」
「黙ってろ」
俺はギュッと抱き締めてチャンミンの頭を撫でる
「ここ……会社…」
「良いじゃん…」
チャンミンの顔を見ようと抱き締めていた腕を緩めチャンミンを見つめた
困った顔して「ダメだよ…」って上目遣いで言われた…
「お前…それ反則だって…」
顎を持ち上げ唇を塞ごうとする…と
「キュルキュルキュルキュル…」
「…」
「…」
二人顔を見合わせる
顔が真っ赤なチャンミンが可愛くて堪らない
「飯…食いに行くか?」
「そうしよっかな」
俺は大笑いしてチャンミンを見る
「なんですか!!」
「いや…何でもないよ…行こうか」
痩せてるチャンミンだから腹を減らしてるってちょっと嬉しく感じた
俺はチャンミンのキャリーケースを持つ
「ユノ…戻って仕事するつもりなんだけど」
「今日ぐらいゆっくりしろ」
チャンミンの鞄にノートパソコンを突っ込む
「行くぞ」
少し後ろを歩いていたチャンミンの横に並び肩を抱いて歩く
「俺の行きたい所で良い?」
「任せるけど……」
歯切れの悪いチャンミンの顔を覗き込む
この展開に戸惑ってるようだ
「後で文句言うなよ」
俺はエレベーターのボタンを押した
待ってる間…俺はチャンミンの横顔を見つめる
「なに?」
俺の視線に気付いたチャンミン
「会えて良かった」
俺の言葉にチャンミンは表情を曇らせる
「ユノ…」
チャンミンが話しかけたと同時にエレベーターの到着を知らせるランプが点滅して扉が開いた
「来たぞ」
エレベーターには誰も乗っていない
俺とチャンミンの二人だけ
静かにエレベーターは下降していく
その間お互い何も話さない
ただずっと……見つめ合っていた
お前と過ごす時間がなくなるなんて俺は耐えられるのだろうか…
不安が俺を襲い始めた

オフィスから出て駐車場へと向かう
「近場じゃないんだ」
俺はチャンミンを見つめる
「乗って」
チャンミンに声をかけてもなかなか乗ろうとしない
「どうした?」
「ユノとこうしてるのが信じられなくて…僕…携帯変えたんだ…酷いことしてるのに」
「チャンミン」
俺は少し威圧的な声でチャンミンの話を途中で止めさせる
「乗って」
今度は静かに助手席に座った
「疲れてるだろ…寝てて良いから」
運転席のドアを閉めながらチャンミンに話す
「どこまで行くつもり?」
チャンミンは少し不安げに俺を見る
「こっからだとそんな遠くないよ」
「そう…」
俺はエンジンをかけてアクセルを踏んだ

チャンミンには見馴れた道を走っているハズ
「もしかして……」
向かってる場所が分かったようでチャンミンは「久しぶりだから嬉しいな」って小さく呟いている
「俺はチャンミンと食べた日以来」
「僕もだよ…僕もユノと食べて以来」
運転しながらチラッとチャンミンを見るとチャンミンは前を向きどこか遠い目をしていた
程なくして目的地に着き車を駐車して店へと入る
«いらっしゃいませー!!»
遅い時間でも威勢の良い店員が出迎えてくれる
「今日も混んでるな」
「そうだね」
«少しお待ち下さいねー»
俺は店員に軽く手をあげて返事をした
「腹は持つか?」
あのけたたましい腹時計を思い出して俺は笑う
「なに…」
チャンミンはいきなり俺が笑い出したのを不思議そうに見つめる
「あの音を思い出した」
俺はチャンミンの顔をマジマジと見つめながら話すと
「たまたま鳴っただけですよっ」
チャンミンはまた顔を赤らめて俺に話した
「お昼食べてなかったから…」
そうポツリと呟くチャンミン
「ちゃんと食べないとダメだ」
俺がそう言うと「親みたい」ってチャンミンは笑った
お前がちゃんと食べてないなんて見れば直ぐ分かるよ…
それぐらいチャンミンは痩せていた
«お待たせしました…コチラどうぞー»
店員が俺たちを誘導する
「前もここだったよな」
「ホントだ」
座った席から店内を眺める
«いらっしゃいませ»
店員がお冷を持ってきてメニューを聞く
「チャーシュー二つで」
«はい…チャーシュー二つ»
「チャンミン…ビール飲むか?」
ちょっと考える素振りをして
「今日はやめとくよ」
そう言って俺を見た
「じゃあチャーシュー二つで」
«かしこまりました»
店員が大きな声でオーダーを通す
「ユノ…どうしてフロアに入れたの?」
「あぁ~…チャンミンの上司さんが受付で入館証手配してくれて」
「え?…上司に会ったの?」
チャンミンは目を見開き驚いた表情で俺を見た
「まぁな…偶然会えたんだけどついでに串カツ屋でちょっと飲んでた」
「え!!…ユノ飲んだの?」
益々目を見開くチャンミンに俺は笑いが込み上げてきて大笑いする
「車だから飲まないよ…上司さんがガンガン飲んでた」
「そっか…ビックリした」
チャンミンはそう言うとホッとした表情で話を続けた
「会社の隣の串カツ屋でしょ…上司の行きつけの店でさ…僕もよく連れてって貰った」
「美味いよな」
「うん」
「でもな…チャンミンが帰ってきたって上司さんが教えてくれて直ぐ店出たから俺は殆ど食べてないんだよ」
「それは残念でした」
チャンミンは笑いながら俺を見つめる
「今度そこで飯しよ」
俺の誘いにチャンミンは一瞬言葉に詰まったが「そうだね」ってやんわり微笑んだ
«お待たせしましたー…チャーシュー二つです»
食欲そそる豚骨醤油の薫りを漂わせ目の前に置かれたラーメン
湯気が凄くて熱々なのが一目瞭然
スープを掬って少し飲んでみたけど熱くて無理だ
「ユノ…フーフーしましょうか?」
熱そうなラーメンに固まってる俺を見てチャンミンが茶化してきた
「それ本気に取るけど」
俺がそう言うとう~んと考える素振りをしてから
「久々にここのラーメン食べれたお礼に一度だけ…」
「してくれるんだな?」
俺は念押しする
「仕方ないですね~…今日だけですからね」
チャンミンは笑いながらレンゲにスープを掬いフーフーと冷まし始め
少し飲んで「大丈夫…」そう言って俺の口の前に持ってきた
「はいユノ…あーん」
俺は口を開けてスープを飲んだ
「美味い……」
チャンミンは肩を震わせて笑っている
「いい歳した大人が何やってんだって感じ」
「まぁな」
二人でケラケラ笑いながら麺をすする
「もう一回」
俺は口を開けてチャンミンを見る
「嫌です…ラーメンに集中したいんでお断りします」
チャンミンは麺をすすりスープをゴクリと飲んで俺を見て笑った
「ユノって見た目とギャップがあって面白い」
チャンミンはそう言って笑うとまた食べ始めた
「そんな俺をお前は好きだろ?」
チャンミンは何も言わないで俺を見て苦笑いしている
苦笑いの意味…
何も言わないで去ろうとしていたチャンミンの複雑な気持ちが滲み出ていると俺は感じた

「あ~…美味しかった…また奢ってもらっちゃった」
「俺に付き合って貰ったしな」
財布をしまいながら車へと歩き始める
車のロックを解除して俺は助手席のドアを開けチャンミンをエスコートする
「自分で開けれます」
そう言いながら助手席に座って笑っている
俺はドアを閉めると運転席へ向かいエンジンをかけチャンミンを見つめる
「なに?」
チャンミンは俺の視線に気付いた
「もう少し付き合って」
俺はそう言うとアクセルを踏んで車を走らせた
道中のチャンミンは一言も話さず静かだった
車は山道を登って行く
どこに向かってるかチャンミンも分かっている
もう一度…俺はお前と一緒に来たかった

誰もいない駐車場
俺はエンジンを止めて外に出た
チャンミンも遅れて外に出る
風が強くて寒い
目の前には綺麗な夜景が広がっている
柵に腕を置いて夜景をしばらくの間眺めていた
「ユノ…風邪引くよ」
チャンミンが俺を呼ぶ
「何で教えてくれなかった?…お前は何も言わず俺の前から去るつもりだったのか?」
俺はチャンミンを見つめる
チャンミンは複雑な表情をしていた
「ビックリしたよ…携帯の番号は変わってる…LINEも無理」
「……」
「俺はお前からの連絡をずっと待ってたのに
お前の言葉を信じて待ってたんだ
会社でのミスで対応が大変なんだと思って掛けたい気持ちを殺して待ってたんだぞ」
俺はチャンミンに気持ちをぶつける
「正直ショックだったけど…俺を求め電話してきたチャンミンだ…俺はお前を信じて疑わなかった」
「ゴメン…」
チャンミンはそう言って俺から視線を逸らす
「俺を見ろ」
クイッと顔を俺に向ける
「俺が異変に気付けたのは彼女が俺に会いに来たからなんだ」
「え…」
チャンミンは驚いた表情をして俺を見つめる
「俺に会いに来たから俺は気付けた
散々恨み節吐いてチャンミンを返してもらいますって凄い威圧的に言われたけどな」
俺は少し表情を緩めてチャンミンを見つめた
「スゲー自信満々でさ…気になってお前に電話しようとしたら繋がらないし
だったら会社に行くしかないなって」
俺は柵にもたれ掛かる
「そしたら上司さんに会ってイタリア異動を聞いたんだ」
「口外しないでって言ってたのに…」
チャンミンは小声で呟いた
「企画が動いてる最中の異動なんてないだろ…
上司さんはこの異動に不服だから俺に愚痴りたくなったんだよ
上司さんを責めるなよ」
「そんな…責めたりしません」
チャンミンはか細い声でそう呟いた
「僕が原因だから…ユノを好きになった僕がいけない
彼女は何も悪くないよ」
チャンミンはそう言って悲しげに微笑む
「僕がユノにのめり込んだのが原因で企画部に迷惑をかけてしまった…
大変な時期なのに…申し訳なくて辛い」
チャンミンは俺を見つめ大きな瞳を揺らす
「ユノ…有難う…そしてゴメン」
「チャンミン」
俺はチャンミンを抱き締める
「イタリアで頑張ってくるよ…業績上げないとね…
彼女は子供が欲しいらしいからそっちも頑張らなくちゃ」
「子供なんて無理だ」
痩せたチャンミンを目いっぱい抱き締める
「ユノ…僕を忘れて」
「お前は?…俺を忘れるのか?」
腕を緩めチャンミンと視線を合わす
チャンミンの頬にスーッと涙が伝う
「忘れる…僕はユノを忘れるから…」
ギュッと指に力を入れるチャンミン
俺はチャンミンの頬にそっと手を添えた
「チャンミン…俺はお前を忘れたりしないしずっと想ってる…」
顔を近付ける俺と視線を合わそうとしない
「俺をちゃんと見ろチャンミン」
しばらくの間俯いていたチャンミンはゆっくりと視線を合わせた
「俺にはお前しかいない…俺は諦めない…お前が好きだから」
そう言って俺はチャンミンの唇にそっと触れた






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